第2回「台湾人道建築奨(賞)」(Building 4Humanity Design Competition, 2019 Taiwan Prize)は世界から作品を募る建築設計コンペティション。「建築設計を通じて、トルコにおけるシリア難民が現地に溶け込み、受け入れられることを目指す」としており、ドイツ、ポルトガル、トルコ、台湾の建築業界が協力して今年5月から世界の作品を募集。その結果、世界25カ国から500点を超える作品が集まった。そのうち学生による作品が104点。プロの手によるものは37点だった。
審査員長を務めたのはフィンランドの建築家で教育者、またプリツカー賞の元審査員長でもあるユハニ・パルラスマ(Juhani Pallasmaa)氏。パルラスマ氏は22日夜、Izmir Architecture Centreで受賞者を発表した。
学生部門の1位はトルコのボアズィチ大学(Boğaziçi University)社会学科のElif Arpaさん。その「transitional shelter」(一時避難施設)の設計では公共スペースが強調されており、大小様々な半分屋外の公共スペースを作ることで、難民たちが互いに助け合う生活方式を実現するもの。
2位はチリのバルパライソ大学(Universidad de Valparaiso)のグループ。Ariel Gajardo Barahonaさん、Pablo Cantillanaさん、Osvaldo Garrido Paradaさん、Alejandro Olivesさん、Danilo Reyesさんが受賞した。
3位はトルコのカディル・ハス大学のグループで、Çağan Köksalさん、Barış Açıkさん、Burak Arifoğluさん、Begüm Yoldaşさん、Akın Ertürkさんが受賞。
主催者はトルコにおける建築理論の大家で、アガ・カーン建築賞(Aga Khan Award for Architecture)の元事務局長である建築家のスハ・オズカン(Suha Ozkan)氏に副審査員長を依頼。審査員には第20回国家文芸奨(賞)及び第3回総統創新奨(賞)を受賞した建築家の黄聲遠氏、トルコのヤシャル大学(Yaşar University)建築学部のMeltem Ö. Gürel学部長、同ビルケント大学(Bilkent University)建築学科の裘振宇アシスタント・プロフェッサー、ポルトガルの「人道的建築・コミュニティの設計と再建協会」(Building 4Humanity, Designing and Reconstructing Communities Association)のA. Nuno Martrins会長らが名を連ねた。
なお、プロ部門の上位3位は該当者無し。審査員団は、プロ部門での応募作品の多くは薄っぺらな形式主義の表現にとどまっており、社会や経済、文化や気候環境への深い考慮に欠けていると指摘。このことは現代のプロの建築家と建築教育の、ヒューマニズムの危機に対する軽視、社会への思いやりの欠如、気候問題への無視といった弊害並びに悪習を示していると苦言を呈した。
一方で学生部門の作品については、受賞作品はこれら重要な問題に対する検討がプロ部門より深くなされていると評価。大学の建築学部など教育機関の指導の下、作品からは難民たちの暮らす基地(ベース)環境への深い理解が伝わり、提案の内容も大胆かつ画期的なものだと称えた。
第2回「台湾人道建築奨」はトルコ南部のハタイ(Hatay)県レイハンル(Reyhanli)の南西郊外にある約2万5,000平方メートルの土地を建設地に想定して行う設計コンペ。目的は設計理念を募り、ここに流入した約12万人のシリア難民が現地に馴染めるようサポートすること。それにより、建築の社会性と文化的意義を知らしめようとしている。
第2回「台湾人道建築奨」は、ドイツのミュンヘン工科大学建築博物館、ポルトガルのベイラインテリオル大学(University of Beira Interior)土木工学及び建築学科、リスボン大学建築学部建築・都市計画及び設計研究センター、建築為人道暨設計與社區重建協會、台湾現代建築学会、実践大学(台湾北部・台北市など)建築設計学科、国立成功大学建築学科が共同で開催。中華民国(台湾)の駐アンカラ台北経済文化代表団、並びにトルコ中東基金会(Ortadogu Vakfi)による委託を受け、台湾の民間団体からの支持も得て実施した。授賞式典は来年行われる予定。